セフィロスは、見開きの分厚いファイルを机に叩き付けた。存外大きな音が地下室に響く。
ニブルヘイムにある神羅屋敷の地下室に山のように存在したファイルのうちの一つ。
そのファイルにはニブル魔晄炉で自分が抱いた疑問に対するある程度の回答が示されていたが、
それは決してセフィロスの望むものではなかった。
ファイル名「J−PROJECT REPORT T」それに記されていたのは、
およそ30年にわたる神羅の計画だった。
北の大空洞でミイラ化した古代種(セトラ)らしき遺体を発見したことに
端を発するジェノバ・プロジェクト。その目的はセトラ、
あるいはセトラに相応する能力を持つものを創り出すこと。
「そして、創り出されたのが…オレ、か……」
神羅によって創り出された人間……セフィロスが思い出すのは、
幼少期を過ごした白い世界。白い光、白い部屋、白い服、白い奴ら……
物心つく前から居た、白い世界。それが普通でない事にようやく気づいたのは、
いつだっただろうか……
『君は特別なんだよ、セフィロス』
セフィロスが唯一懐いていた大人、あの白い世界で一人だけ温かい目をしていた大人、
ガスト・ファレミス博士が、いつも微笑んでそう言っていた。
その意味は当時のセフィロスにはまだ良く分からなかったのだけど、
他でもないガスト博士がそう言ってくれるのが、ただ嬉しかった……
「特別とは、こういうことだったのか……ガスト博士……」
セトラの力を手に入れるために、創り出された……そのため、だけに。
「そう、か…オレの…心なんて、初めから……どうでもよかったのか」
心を持つことなど、最初から期待されてなどいなかった。
だから、実験に次ぐ実験の毎日で、次第に痛覚すら麻痺してしまった自分を
「感情のない子供」と言い放った宝条……その言葉を聞いて感じた、一抹の寂しさ。
それすらも、奴らにはどうでもよかったのだ。
「…ならいっそのこと、心など無ければよかった……」
どうして、オレに笑いかけたんだ……ガスト博士。
あなたの笑顔の温かささえ知らなければ、オレはどんな酷い扱いをされても、
苦痛など感じなかったのに……
「勝手に期待させて……勝手に…いなくなった……」
セフィロスは思い出していく。レポートと照らし合わせながら、
パズルのピースを合わせるように、ひとつひとつ。
ガスト博士がいなくなったと知らされたときは、随分泣いたのを、覚えている……
一体いつからだろう、自分が、泣かなくなったのは……
「ウォルフガング。どうしてずっと泣いてるんだ」
「……その呼び方やめて。アイツラみたい」
それはセフィロスが8歳の頃だった。たまたま他のモルモットと一緒に寝る機会があった。
自分とさほど歳の変わらないその子供は、
セフィロスの言葉に心底嫌そうな顔をして、ウォルフィと呼ぶように言った。
「ならウォルフィ、どうして泣いてるんだ」
「…………」
「検査が嫌なのか?」
「……ううん。淋しい」
「淋しい?」
「母さんがいない」
母さん、という言葉に、セフィロスは一瞬ある種の後ろめたさを感じた。
「死んだのか」
「ちがう。会えないの」
ウォルフィの一言に、セフィロスは僅かな落胆を実感する。
……何を期待していたのだろう。傷を舐め合うつもりでいたのか、馬鹿馬鹿しい…
「生きてるならまだいいじゃないか」
言葉に棘が含まれたことを自覚して、セフィロスは自己嫌悪で表情を歪めた。
だがウォルフィはその表情を別の意味にとった。
「あ…ごめん……セフィロスの母さんは」
「オレを生んですぐ死んだらしい」
「……ごめんね」
気にしないでいい、とセフィロスは首を振った。それよりも、
少し聞いてみたいことがあった。白衣のアイツラには聞く気のしない質問。
「母さんって、……どういうものなんだ」
「……えっ、母…さん…?……えっと……うん…そう、だなあ……」
一瞬ウォルフィは戸惑ったが、自分の母親を思い浮かべて、少し頬を緩ませながらこう言った。
「俺のこと、一番に想ってくれるの」
「一番に?」
セフィロスの脳裏に思い浮かんだのは、かつて父のように慕っていた人物。
……でも、ガスト博士は自分が5歳になるのを待たずして、失踪してしまった。
自分のことを本当に一番に想ってくれているなら、何も言わずにいなくなったりしない……
「いいな……オレには、そんな人いない……」
淋しげに目を伏せたセフィロスに、ウォルフィは一瞬驚いたように目を見開いた。
そして、無邪気そうに柔らかく笑う。
「セフィにもきっといるよ?セフィを一番に想ってくれる人」
「………なに?…」
さも当然であるかのようにウォルフィが言い放った言葉は、存外ストンと心に届いた。
そしてその言葉は、少年に少なからずの衝撃を与える。
「今はもういないかもしれないけど、セフィにもお父さんとお母さんがいたんでしょ?
だからセフィは生まれてきたんでしょ?自分の子供を愛さない親はいないよ……
それに、これからそういう人に出会うかもしれないよ。自分のこと愛してくれる人に。
これからなんて、誰にもわからないもん」
セフィロスの魔晄の瞳が、大きく見開かれた。一筋射し込んだ、僅かな希望。
それは溺れている人間が見つけた細い藁に似ていて。
「…オレに、も……?」
自分にも両親がいた、確かに存在した……顔も知らない、
けれど自分と血の繋がった親が、いた……ジェノバという母親。
もし、死んだりなんかしなかったら、ちゃんと自分を愛してくれた……?
そのときの衝撃は、セフィロスの心に深く根付いた。今は亡き母への思慕として。
それは長い間、セフィロスの支えとなり続けていた……
「………」
セフィロスは静かに唇を噛み締めた。レポートを持つ左手が無意識に震えている。
地下室にあった多岐に渡るレポートを読み漁るうちに、徐々に事実が明らかとされていく。
自分のささやかな希望を打ち砕くことばかり……
それでもセフィロスは何故かレポートを読み続けることをやめることはできなかった。
もしかしたら、全て嘘なのだと……何かに否定して欲しかったのかもしれない。
ジェノバとは、2000年前の地層から発見されたセトラのこと。
その細胞を胎児に植え付けたのだという。だから厳密に言えばジェノバは母ではない。
セフィロスを産み落とした女性は別に存在していた。
父親の名前は何処にも記されていなかったが、母親の名前はルクレツィア・クレシェント。
父親はセフィロスが胎児の時に親権を放棄し、ジェノバ・プロジェクトにセフィロスを提供した。
そして母親は、セフィロスが生まれて2年と経たぬうちに、いずこかへ失踪している―――
「………オレ、は……」
つまり、両親は生きている……自分を、…捨てて………
「オレは、…今まで何を…期待して……」
胸の下からこみ上げてくるものを堪えるように、じっと目を閉じた。
馬鹿馬鹿しい。本当に馬鹿馬鹿しい……馬鹿馬鹿しいのはこの現実か、
それとも勝手に虚構を夢見続けていた自分自身なのか……
「おい、セフィロス!」
それはセフィロスが地下室に来て何日経った頃だろうか。
ずかずかと荒い足音を立てて煩い声で自分を呼ぶ……顔を上げずとも、
誰が来たのか判った。だから無視して手にした本の内容を追い続ける。
「セフィロスっ!聞いてんのかよ!」
宿屋からいなくなったセフィロスを必死で探していたザックス。
ようやく見つけたのに、何の反応もせず本を読み続けるセフィロスに苛立ちを隠せないでいる。
「こんなとこで何してんだ!」
ザックスは間近まで寄ろうとした。が、
ある地点まで近づいたところで急に足が止まる。
それは、危険なモノに対するソルジャーとしての反射反応だった。
「……っ!」
ザックスには、それ以上近寄れなかった。一心不乱に文字を追うセフィロスの、
目…表情……ぞくっ、と全身が総毛立つ。背筋を凍らせる空気、表情の無いセフィロス…違う、
あまりにもそれが強過ぎて「表情が無い」とザックスが錯覚しただけ、
びりびりと痛いほどの感情……それはセフィロスの胸に渦巻いている、
烈しい怒りと、苦い思い。そして、深い、哀しみ……
「…あんた……」
「……1人にしてくれ」
一瞥もくれずにそれだけ言うと、ザックスが物言いたげな顔をしてどれだけ立ち竦もうと、
一切を遮断したセフィロスはもう何も言わなくなった。
もどかしそうに表情を歪めたザックスは、それが最後の手段であるかのように、
押し殺した声で一言だけ呟いた。
「……クラウドが、…心配してる。すごく」
「…………」
反応は無かった。ザックスが辛そうに顔を伏せる。今はもう、
何を言っても駄目なのだと…そう理解すると、静かに地下室を出て行った。
ザックスの気配が完全に無くなってから、どれだけ経った頃だろうか……
ふと、読んでいるはずのレポートの内容がさっきから全く頭に入ってこないことに気づいた。
…疲れたのだろうか……自嘲気味に首を振ろうとして、ほとんど無意識に口を滑らせていた。
「……クラウド…」
…その音(ね)。それは言葉と言うよりは、音色。言葉の意味を脳が捉えるよりも早く、
その音色の微弱な響きが胸に届いた。それはまるで身体の中で鈴が小さくチリンと鳴った様で、
セフィロスは一瞬だけ、自分を苦しめるものすべてから解放された感覚を感じた。
「クラウド?」
もう一度唇がその音をなぞろうとしたが、口から出てきたそれはもう唯の人物名に過ぎなかった。
そしていつものように感情より理性が優位となる。セフィロスの目が再び懊悩の色を帯びた。
「心配して、る……」
誰にも何も言わず宿屋を出たのだ。普通誰でも心配するだろう……クラウド。
セフィロスはふとクラウドの顔を思い出そうとした、しかし浮かんだのは、
久しぶりに会ったときの一般兵のメットに覆われたクラウドの姿だった。
…違う、それじゃない。セフィロスは無意識に眉間に皺を寄せる。
その下にあるまだ少し幼い顔、きれいな瞳……それを想い描こうとして、
でも上手く思い出せない。何故だろう、あんなに好きだったクラウドの笑顔が、
霞んで、思い出せない……
「クラウドに……会いた…い?」
任務だとか上下関係じゃなくて、以前のように優しく話しかければ、
クラウドはまた笑ってくれるだろうか…?この事実がどうでもよくなるくらいの、
笑顔をくれたら……でも、…でも、自分が神羅に創り出されたサンプルだとクラウドが知ったら
、…どうなる?憐れむ?…怯える?嫌だ、怯えられたくない!
怯えたクラウドの顔を見たくない…!
クラウドの顔を見たい。でも会うのが恐ろしい。
クラウドが自分を受け入れてくれなかったら……考えただけで心に霜が降りる。
やはり今はクラウドに会いたくない、セフィロスはそう結論付けた。
残酷な出生の事実に晒されて、ショックだとか、やるせないとか、
そういうのを遥かに通り越したところ、身体の奥底から凶暴な何かが渦巻くような、
せり上がってくるような、いずれ溢れ出しそうな恐ろしい感覚がする。
それがどうかクラウドを傷つけないように……この程度の感情くらい
、自分ひとりでコントロールできるから、どうか……
知らない方がよかった、という言葉……何て…馬鹿げた言い文句だと思う。
もとより、はじめから、倒れ始めたドミノは止められなかったのだから……
その事実を理解したとき、セフィロスは微笑んだ。
もしセフィロスの立場だったら、誰もが同じ反応をするだろう。そうするしか、なかったのだ。
セフィロスが読んだのは、他でもないガスト博士のレポートだった。
しかしレポートに記された年号は明らかに失踪後のものだった。
神羅を捨てたはずの博士のレポートが何故ここにあるのか……
その理由は明確には記されていなかったものの、
このレポートの記述に度々出てくる、正真正銘唯一の古代種である「イファルナ」という女性、
そしてガスト博士の後釜である宝条が何か関係していることは明らかだった。
ガスト博士のレポートに記されていたものは主に3つ。
古代種・ジェノバ・ウェポン。セフィロス自身に直接関わるものは、
古代種とジェノバについての記述だった。
それらには「古代種であるイファルナの証言であるため真実である可能性は極めて大」と
前置きがあった。そしてガスト博士はレポートでこう明言した。
『ジェノバは古代種ではない』
そもそも何故セトラは絶滅に追いやられたのか。それは、
かつてこの星を大きな災害が襲い、セトラはその犠牲となったというのがこれまでの有力な説だった。
それは決して間違いではないと、セトラであるイファルナは語った。
セトラを滅ぼしたものの正体、それは「空から来た厄災」であった。
厄災は初めヒトの姿をしてセトラの前に現れた。それは死んだはずの母の姿であり、
兄の姿だった。そうして厄災はセトラに近づき、ウイルスを与えた。
ウイルスに侵されたセトラは心を失いモンスターと化し、
同じように他のセトラに近づいてはウイルスを広めた……
セトラを滅ぼした「空から来た厄災」それこそが、ジェノバの正体だった。
それは紛れも無く、これまでのセフィロスという全存在を、完全否定するものだった。
セフィロスは何故か惰性のように後に続く文字を眼で追っていた。
ガスト博士の文章はこう締めくくられていた。
「私は怖い。盲信のあまりに厄災を古代種と間違え、恐ろしいモンスターを創り出してしまった。
にもかかわらずジェノバを軍事利用しようとする神羅の姿勢に恐怖を感じ、
イファルナの勧めもあり私は神羅を捨てた。――私は、怖い。ジェノバが、神羅が、そして」
「…………」
……セトラを生み出すために発足したジェノバ・プロジェクト。
セトラを生み出すために、生まれる前に両親からサンプルとして提供され、
人並みの愛情も受けられず、実験漬けの毎日、感情を消失させた白い世界で、たったひとり
……でもそれは、セフィロスが古代種の力を受け継いでいて『特別』だったから。
幼い頃、ガスト博士が自分は特別な存在だと言ってくれたから。だから、耐えられたのに。
「なんの、ために……」
呆然と天井を仰いだ。膝が小刻みに震えて力が入らない。
そのたったひとつの存在価値すら呆気なく崩れてしまった今は。
「オレは、いったい何のために、生まれて………」
視線の焦点が何処にも合わないまま、憐れなほど声が震えた。
崩壊…二十数年の人生が崩壊して行く。今まで立っていた大地が根底から崩れて行く……
縋る物を一つ残らず奪われて、今にも倒れそうによろよろふらふらとして。
もう、立っていられない…膝が崩れてしまう……そうしたらきっともう一生立ち上がれない気がした。
「オレは、……ねえ、オレは……何…?」
答えの無い問いかけ……だと、セフィロスは思っていたが。
―――わかって、いるでしょう?
頭に響いたのは、女の声。セフィロスの知らない声だった。
いや…違う、ずっと昔から、知っていた気がする……
その声と共にセフィロスの脳裏に映し出されたのは、ニブル魔晄炉で見た、
たくさんの青いカプセルに入っていたモノ。神羅によって創り出されたモノ。
高純度の魔晄に浸され、もう人とは呼べなくなっていた…モノ。
「同、じ?……オレも、…同じモノ?」
自ら絶望を招くような問いかけをした。
だがその直接の答えをセフィロスは聞くことができなかった。気配が、したのだ。
地下室に、誰か入ってきた……
―――あなたの正体を知ったら、あの子はどれほど怯えるかしら
「セ、フィ…?」
クラウドが、降りて来た。一度だけ地下に行って戻ってきたザックスは、
ただ一言「クラウドは絶対に降りるな」と言って、
ザックスらしくない酷く難しい表情と変にカラ元気な表情を繰り返している。
その理由を知らぬまま、ただセフィロスを心配するあまりにいても
たってもいられなくなったクラウドは、
とうとうザックスの言いつけを破って降りてきたのだ。
「セフィ?……セフィ…?」
本とレポートの散乱した地下室を不安げに見回して歩きながら、
奥の書斎に俯いているセフィロスの姿を認めると、
クラウドは少しだけ安堵したように傍まで駆け寄った。
「セフィ、…具合悪い…の?」
セフィロスはゆっくりと、スローモーションをかけたようにゆっくりと、顔を上げて、
クラウドの姿を視界に捉えた。セフィロスの表情筋は硬く凍り付いたまま、
けれど碧色の瞳だけは、底の無い怯えに満ちていた。
もう一週間以上食事も睡眠も全く摂っていないセフィロスの顔は
白皙を通り越して青みを帯びていて、落ち窪んだ眼窩には青黒い痣が刻まれ、
頬は削げ、唇は色味を失って白く、魔晄の瞳だけが爛爛と存在を主張していた。
幽鬼にも似たそのありさま。セフィロスのぞっとするほど暗い瞳と目が合った一瞬。
クラウドはびくっと身体を強張らせた。セフィロスの全身が放っている、
負の感情がないまぜになった気配を本能的に恐れたのだ。
そのクラウドの反応に、セフィロスの瞳が驚愕に見開かれる。
―――ほら、怯えた
かくん、と、セフィロスの膝が力なく崩れて床についた。瞳が絶望に染まる。
拒絶、拒絶、恐怖、拒絶……クラウドの目、モンスターを見るのと同じ目だ。
もしクラウドが真実を知ってしまったら、もう絶対に笑いかけてくれなくなる……
愛してもらえなくなる……ガスト博士が自分から逃げ出したように。
化け物だから、愛してくれない…いつか絶対に捨てられる。
だってみんな、みんな自分を捨てていったじゃないか。
どんなに縋りついて泣いて叫んで望んでも愛してもらえない存在なら、いっそ……
―――いっそ壊してしまえばいいのよ
「セフィ……セフィ、だいじょう…ぶ?」
不安と恐れの入り混じった瞳をしたクラウドが、
勇気を振り絞ってセフィロスの顔を覗き込んでくる。
そっと頬を撫でる小さな手はひどく冷たくて。
―――欲しいなら力ずくで奪えばいいじゃない……
絶望に彩られた碧の瞳が、急速に狂気に染められていく。
頬に伸ばされたクラウドの手首をぎりっと掴んだ。
「痛、いっ……セフィ…」
―――酷いことしたっていいじゃない?誰もあなたを責められないわ
一気に体重をかけて押し倒した。突然硬い床に押し付けられて、
クラウドが苦悶の声をあげる。構わずにクラウドの靴を乱暴に脱がして放り投げ、
一般兵の服のズボンを下着ごと引き千切るように剥ぎ取った。
セフィロスが何をしようとしているか悟ったクラウドは恐怖に表情を引きつらせる。
「やめてっ……やめて!やめて!セフィ!!」
―――だってあなたは初めから人間じゃないのだから。
全力で抵抗しようとするクラウドを容赦なく殴りつけた。何度も、何度も。
やがてクラウドがぐったりしたようになると、何の準備も無しに、
穢れを知らない蕾に指を突き入れた。
「やだっ…痛い……セフィ!お願い…正気に戻ってよ…!!」
乱暴に指を抜き差しする。恐怖と痛みにクラウドが抵抗しようとするとその度に頬を、
身体を殴りつけた。あっという間に身体中痣だらけになった。
そしてろくに慣らさないうちに、セフィロスは自分のモノが勃ち上がるや否や蕾にあてがって
強引に腰を進めようとする。
「いや!…こんなのいや!!いやああああああ!!」
先端を無理やりねじ込むと、蕾は無残に裂けて血を溢れさせた。
中は恐ろしく狭かったが、血で滑りが良くなって強引に根元まで押し込んだ。
クラウドの恐怖と苦痛に歪んだ顔、意味を成さない悲鳴、
食いちぎらんばかりに締め付けてくる粘膜……それらすべてが、
これまで感じたことの無い、気の遠くなるような高揚をセフィロスにもたらした。
「ふ、ふふ……ふふっ」
セフィロスの口から哄笑が漏れた。おかしくて仕方なかった。
あんなに、あんなにあんなにあんなに欲しかったものが、こんなに簡単に手に入るなんて。
たやす過ぎて哄笑が止まらなかった。笑いながら犯した。
触れたくてたまらなかったクラウドの身体を思う存分蹂躙して、
今まで抑えつけていた欲望という欲望をぶつけた。
夢の中で何度もなぞったように深く激しく突き上げて、
胸に隙間が無くなるくらい幾つも鬱血痕を残す。荒淫に疲れ果てると少しだけ眠って、
意識が戻るとまた手酷く抱き続けた。何十回抱いてもまだ足りない。全然足りない。
だってあんなに欲しくて欲しくて仕方なかったんだから……
いつしかクラウドの瞳は虚無しか映さなくなり、四肢がだらりと垂れ下がり、
意味のある言葉を話さなくなった。だがセフィロスはそれでもよかった。
ずっと欲しかった物を遂に手に入れた昏い悦びに酔いしれていた。
幼い子供が静かに泣きじゃくる声にも気づかないまま。
『違う…違うよ……オレは…そんなものが欲しかったんじゃない……』
「狂乱舞(Dancing Mad)X」に進む?
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