女性特有の柔らかさをクラウドが知るのは、ティファが初めてだった。
張りつめた筋肉とは違うまろやかさ。
女性の身体と男性の身体はうまくかみあうようにできているのだと、どこかで聞いた。
男同士、女同士では、その一体感を得られないのだと。
抱くという行為自体は、気持ちいいと思う。
けれど抱かれる方が遥かに気持ちよかったという事実にクラウドは気付いていた。
それが生理的な原因からなのか、気持ちからくるものなのか、
クラウドは考えないようにしていた。それは、今となってはどうでもいいことだったから。
ティファといると、心が穏やかになれる。繋がると気持ちいいし、
何より自分を愛してくれる、居場所……
ティファを抱く自分を、俯瞰から誰かが見下ろしている。きっと、それは自分だ。
どんなに夢中になろうと、上り詰めようと、視線は途絶えない。
「愛してる、クラウド」
言われるたびに、心にひっかかる、棘。俺も愛してる、と言おうとして、
いつも喉元でひっかかるもどかしさ。
クラウドにとってティファは大切な恋人だ。
けれど今もクラウドの心を縛り、クラウドを支配するのは
……さらさらと長く絹糸のような銀。頑強でありながらビスクのように真白い肌。
刀匠が魂を込めた刀の刃、その切っ先によく似たまなざし……その存在すべて。
そうではあるけれど、今は亡き彼に対してなら「愛してる」を言えるのかどうか、
クラウドに確信は無かった。もう彼はいないのだからそれを実証する手立てはないのだけれど。
しかし7年前までは確かに言えたのだ、だって毎日のように言っていた、
それは自然なことで、本当に自然なことで、
当時の自分がどれほど真っ直ぐに彼を愛していたのかがわかる。
あのときと同じように、同じ声音で、同じ気持ちでティファに言えばいい。
それはわかっているのだ。
クラウドは、いつもそうするように、心の中でつぶやいた。
けれどそれはまるで意味を成さない呪文のようで。
「ティファ、アイシテル」
そのひびわれた声音にクラウドはうなだれた。
なら彼に対してならば言えるのかと、もう一度つぶやいた。
「セフィ、アイシテル」
どちらにせよ、ひびわれていた。どちらも本当。どちらも嘘。
ただ確かなのは、自分はもうこの言葉を使うべきではないという、諦観だった。
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