病気のことを知ったかつての仲間たちは、頻繁にクラウドの元を訪ねるようになった。
クラウドは彼らをみな、穏やかな微笑をもってむかえた。
しかしそのことが何よりもクラウドを蝕む病の証拠となった。
電話では頑なに病気を信じようとしなかった者も、その微笑で悟らざるを得なかった。
クラウドが結婚してから2年近くも顔を出さなかったシドでさえも、
今では月に一度はクラウドの家を訪れるようになった。
みな病気のことは一言も触れず、ただ雑談を楽しみ、
カームやチョコボファームへ出かけたりもした。クラウドは、前にも増して、
幸せそうだった。穏やかな日々だった。
仲間たちの中にも、マリンのように「困った子」はいた。それはナナキだった。
病気のことをティファが告げても頑として顔を出さなかった。
半年以上が過ぎたころ、半ば強引にユフィに引っ張られてミッドガルにやってきたとき、
クラウドを見るや否や大声で泣き出して、
結局その日のうちに帰れずにクラウドの家に泊めてもらうことになったのだ。
ナナキは一晩中ぐすぐすいいながらクラウドのベッドからべったり離れなかった。
「ほんとーに……困った子だなあ、ナナキは……」
朝、だろうか。カーテン越しの窓から明かりがこぼれだしたころ、
まどろみから目を覚ましたクラウドは、
まだベッドの横でぐすぐすしているコスモキャニオンの守護者へ弱弱しく呟いた。
熱がある。体もひどく重い。高熱の前兆だった。
「クラウ、ド……?」
「うん……でも、嬉しい……」
ナナキは意識を浮上させて、耳をぴんと立てた。
「なんで、嬉しいの……?」
くつくつとクラウドが笑う声が聞こえた。ナナキは上体をあげてベッドを覗いた。
「俺、愛されてるなぁ、って……」
「クラウド……」
「ティファ、マリン、パティ。ナナキに、シドに、バレット、
ユフィ、ケット・シー……たくさんのひとに」
「うん……クラウドは、たくさんのひとに、愛されてるよ」
「俺は、幸せだよ。ナナキ………」
クラウドは、まぶしそうに瞼を手の甲で押さえた。
「…あのひとには、俺しかいなかったのに……」
「クラウド……?」
―――オレを……愛して………―――
「あのひとは、あんなに愛してもらいたがっていたのに……」
「クラウド……あのひとって…だれ……?」
ナナキの問いに、答えは返ってこなかった。かわりに、瞼を押さえたクラウドの手の下から、
涙がつたい落ちるのを見て、何故かナナキは、胸が締め付けられた。
「クラウドぉ………」
静かに涙をこぼすクラウドに、ナナキは知らず涙した。
それはもらい泣きだったが、あるいはクラウドのか細い心の悲鳴を
ナナキの心が聞いた所為かもしれなかった。
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