夏至に陰ろう


「あーっ、ほらほらパティ、危ないでしょ」
昼食の食器を洗い終わってリビングに来たティファは、 よたよたと歩くパティの足元に転がっていたおもちゃをあわてて籠にしまった。
「もうマリン、パティが転んじゃうわよ、こんなに散らかってると」
「あ、ごめんね、でも半分はパティが自分で出したんだもん」
そうこう言っているうちに、べちんと豪快な音がした。 足元にあったくまのぬいぐるみに足を取られて、パティがこけたのだ。
「パティ!」
「パティだいじょうぶ!?」
「あー?」
青ざめて傍によるふたりを尻目に、パティは床にぶつけて真っ赤になった顔を上げて、 にっこりと笑った。ただ、鼻から血が出ていた所為で、 かわいさに少々壮絶さが入り混じった表情であったが。
「ち、血ーー!」
「ほら、ティッシュティッシュ」
あわてふためくティファ。比較的冷静に対処したのはマリンだった。 ティッシュで鼻をふいてやる。さほどひどい出血ではないから、すぐに止まるだろう。
「ティファったら、格闘強いのに、血がダメなの?」
「ちがうわよ、パティの血だからダメなの」
少し恥かしそうにむくれるティファを見て、マリンが嬉しそうに笑った。
「すごいねパティ、ティファがこんなになるの、パティだからだよ」
「あーあー」
まだ顔から赤みがひいていないのに、パティは満面の笑顔だ。 その笑顔に、ティファもマリンも笑顔になる。
「ほんとよく笑うねえ、パティ。もしかして、天然なの?」
「笑うのはともかく、天然なのはクラウド譲りね」
「言えてるー」
ふたりがくすくすと笑っているとき、リビングの電話が鳴った。 携帯の方にかからないということは、仕事の依頼だろうか。 クラウドは今ミディールにまで仕事に出かけていて、ここ数日留守にしている。 代わりに出ようと思って、受話器をとった。
「はい、ストライフです」
しかし相手は仕事の依頼主ではなく、意外な所からの電話だった。 次第に色を失ってゆくティファを、パティはどこかきょとんとした顔で見つめていた。


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