頭が朦朧とする。隣で寝ているティファは……いない。 ベッドじゃない。誰かに、抱かれている。怪訝に思って横たわったまま視線を巡らすと、 ちょうど、いけないことをしてしまった後のような、 複雑な表情で自分を見下ろしているセフィロスと目が合った。 そこでようやく、自分は気を失ったのだと気付いた。
「……おまえが死んでしまうと思った」
少し安堵したようにクラウドは微笑んだ。
「セックスで死んだりしないよ」
クラウドの微笑が伝染したのか、セフィロスも穏やかに微笑んだ。 その表情があまりにもきれいだったから、あ、キスして欲しい、と クラウドはそう思って、それが通じたようにキスが落ちてきて、 クラウドは驚いたというよりも嬉しくて仕方なかった。
「どのくらい気絶してた?」
「……20分程度。そろそろ準備した方がいいだろうな」
こうして教会でセフィロスと逢うようになってひと月経とうとしている。 セフィロスと逢うときはいつも、同じ位の時間に帰れるように携帯の目覚ましをセットしている。 ティファに不審がられないためだ。
「セフィロスと寝たいな……」
「……?」
突然のつぶやきにセフィロスは不思議そうな顔をした。 クラウドはそれに気付いて、少しためらいながらも説明を始めた。
「ティファとは、同じベッドで、一緒に寝るんだけど……寄り添ってるとね、 隣にいるのがセフィロスだったら…って、思うことがあるから……」
そのとき、ずきん、と妙な痛みが胸に走った。 それはセフィロスと逢うとよく襲って来る正体の分からない痛み。 悟られないよう気をつけながらクラウドは続けた。
「セフィとは、数時間しか会えないでしょう?一回だけでいいから…… 昔みたいに、セフィロスを抱いて寝てみたいなって……」
そのとき、目覚ましが鳴った。「もう帰らなきゃ……」そう言って立ち上がりかけると、 セフィロスがクラウドのコートの袖をぐいっと引っ張って抱き寄せた。 その行為を不思議に思う前に唇が奪われていた。
「ふ……っ……ぅん…ん……」
セフィロスとキスをするたびに全身が溶けるような錯覚を覚える。 口の中を蹂躙され尽くしてようやく唇が離れると、首筋を強引にあらわにされ、 思うさま吸われた。
「あ……あ…っ」
セフィロスはこれまで決してクラウドの身体に痕を残すことはなかった。 今吸い上げたそこは、昨夜ティファによって痕をつけられた箇所だった。
「セ、フィ……」
無意識に潤んだ瞳で、セフィロスを見た。その瞳が何よりも雄弁に語る。
もっと欲シイ―――
ずきん、とまた胸に疼痛が走った。その痛みでクラウドは一瞬だけ正気に戻った。 陥落するぎりぎりでクラウドはセフィロスを突き飛ばした。一気に駆け出して教会を出た。 これ以上一緒にいたらもう止まらなくなってしまう。それが怖かった。
開け放たれた教会の扉をセフィロスはどこか呆然と見つめた。 自分はさっき何をした?正気を捨てて、強引に貪ろうとした。強引に! 最初は会えるだけで十分だと思っていた、のに、思いは勝手に溢れてくる。 帰るべき場所に戻ったクラウドは、いつものようにあの女性に笑いかけるのだろう。 その手で抱きしめるのだろう。そして、夜になれば……全身から、力が抜けた。 膝が折れて、無意識に腕を抱いた。
「……お願い……オレを抱いて……」
絞り出すような声で、苦しげに呻いた。
「オレだけのものになって………」
胸が悲鳴をあげている。


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