「クラウド…クラウド……」
散々クラウドを陵辱し尽くしたセフィロスは、
繋がったままクラウドを抱き締めてうとうとと半覚醒の状態にいた。
荒淫の合間の僅かな休息を貪っている。
この監禁ともいえる状態、いつ終わるとも知れない暴行に、
クラウドは現実を放棄してしまっている、もうずっとまともにしゃべらない。
半開きの唇からは呻きと喘ぎしか出てこない……
だがセフィロスはそれを気に留める様子も無かった。
「クラウド……クラウド……」
セフィロスはまどろみの中で、腕の中で意識を飛ばしているであろう
クラウドの体温をじっと感じていた。
クラウドの柔らかくて温かい身体をほんの少しも離したくなかった。
クラウドと身体が触れ合っているところ、繋がっているところから
「クラウド」が注ぎ込まれていく。それはセフィロスの中に満ちて、
クラウドでいっぱいになって、今にも溢れそうで、
それでも一滴もこぼしたくないからセフィロスは必死で取り込もうとする。
それは水に溺れる感覚に似ていた。頭の芯がぼうっと痺れて、
気が遠くなればなるほど嫌なことを考えずに済むから……
「クラウド…クラ、……、………?」
それまでの、穏やかとも言えたセフィロスの表情が、突然ざっと無表情になった。
やがてその顔が絶対零度の冷笑を浮かべる。
セフィロスはおもむろにクラウドの中から自身を抜き取ると、
ほとんど乱れてもいない着衣を整えて立ち上がった。
ゆったりとした足取りでセフィロスは書斎を出た。
薄暗い研究室の出入り口、扉の前まで来ると、
ためらいなく扉を開けた。その先には表情を凍らせたザックスが立っていた。
「……どうした?」
静かな声だったが、まるで縄張りを侵された獣のような気配を漂わせている。静かな怒気。
やつれている所為でかえって眼光は鋭かった。
ザックスは思わず身が竦みそうになるのを、両手を硬く握って耐える。
「…クラウドが……来てるだろ」
「何故そう思う?」
「クラウドが俺に黙ってまで行きそうな場所、ココしかねえんだよ」
セフィロスは否定も肯定もせずに静かな冷笑を湛えている。
それはザックスの心に確信を植えつけた。
「…クラウドが何日も戻って来ねえ理由はふたつ考えられる……
ひとつはクラウド自身がそれを望んでいる場合。そしてもうひとつ、
あんたが強引にクラウドを帰らせないようにさせている場合」
「成る程な、それで、おまえの結論は?」
「どっちでもいい。……クラウドを解放しろよ」
ザックスがそう言い終らないうちに。セフィロスは声を上げて笑い出した。
ザックスは訳がわからないままセフィロスの哄笑に恐怖を覚える。
「ははっ……クラウドが望む?望まない?…おまえは何を勘違いしている」
そしてセフィロスははっきりとこう言い切った。
「クラウドの全存在はオレのものだ」
そう断言した。ついこの前、本当についこの前、
その凶暴な想いを怖がっていたセフィロスが……
「クラウドの身体も、心も、言葉も、表情も、声も、視線も、魂も……全てオレのものだ。
そのオレが、クラウドを常に傍に置いて何が悪い?クラウドはオレしか見ない。
オレの声しか聞こえない。オレの為だけの存在」
遠くを見据えるようなセフィロスの目には、ほの暗い炎が灯っている。
その陶酔に似た妖しい輝きにザックスの背筋に悪寒が走った。
「絶対に離さない。オレ以外の存在が、クラウドに関わるのを許さない」
「あんた……くる…ってる……」
「誰にも邪魔はさせない……オレからクラウドを奪おうとするモノは
……絶対に許さない……!」
嫌な風が渦巻いてセフィロスの髪とロングコートが浮き立つ。ここは地下だ、
風なんて吹くはずが無い。何かが渦巻いている。殺気だ…ケタ外れの殺気で空気が振るえている。
その振幅は徐々に増して、やがて臨界点まで……
殺られる!!
渾身の力でザックスは扉を閉じた。セフィロスと空間が遮断されて、
一気に全身から力が抜けてその場に膝をついた。
ほどなくして扉の向こうのセフィロスの気配がなくなると、
ようやく空気が正常に戻ったようで、思い出したように深く息を吐いた。
「……ちく、しょう……」
ザックスは苦悶のように低く呻いた。さっきのセフィロスは本気だった。
あのままいたら確実に引き裂かれていた……
「ちくしょう……ちくしょうっ」
土の露出した地面を力任せに殴りつけた。頭に血が上っている。
それがわかるから、ザックスは思いっきり拳を叩きつける。
手が赤く腫れるまで、腕が痺れてくるまで、繰り返し……
一方、ザックスの気配を察したときの緩慢な足取りとはうって変わり、
セフィロスは心持ち急ぎ足で書斎に戻っていった。
書斎の奥で横たわっているクラウドは、目を覚ましたのだろうか、
殴られて腫れたまぶたを薄く開けたままぼんやりとして、
同じように赤く腫れた頬には涙の跡が一筋だけ残っていた。
「あぁ、クラウド?済まない…一人にさせてしまって……」
寂しかったか?そう言いながら抱き上げて、指でそっと涙の跡をなぞった。
「…オレは心がもぎ取られる感じがした。ほんの少ししか傍を離れなかったのにな……
オレは、おまえと離れたら…もう生きていけない」
クラウドを胸の中で包むようにぎゅっと抱きしめた。
奔放な金髪に顔を埋めて、愛しげに頬擦りする。
「ねえ…もっとおまえを感じさせて。挿れていい?
オレのモノがすごくおまえの中に入りたがってる……
どんなに抱いても、すぐ足りなくなる……もっともっと欲しくてたまらなくなる」
クラウドの中にずっといたい……この子の熱さを一番感じられるから。
とろけそうなくらい柔らかくて、隙間無く絡み付いて、
全身を優しく包まれてる気がするから……
「おまえとひとつになりたい……ひとつになって、ずっと一緒に……
抱き合ったまま千年経てば、…同じ石になれるだろうか……」
第四章 終了
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