落
ち
て
ゆ
く
あなたは、誰?
すごいぞ!見ろ、このデータを!今回の検査の結果、
基礎的な身体能力及びIQは同年齢の子供のおよそ3倍であることが判明した。
特に反射、記憶力の伸びが著しい。さすがわれらが造りだしただけのことはある!
わからない……
誰……?
あなたは、誰?
ほら、あの子よ。ええそう、いまあそこで本を読んでいるわ。
何の本かわかる?絵本じゃないわよ、よく見て。統計学の本よ。
横にあるのは解析学の。ええあの年でよ。プロジェクトチームの話によると、
微分方程式も理解できたらしいわ。大学レベルの問題をよ。
あそこまで来ると、なんだか気味が悪いわね。ほら見て、あの冷たい表情……
だれ……?
あなたは、誰?
やぁ、×××××。こちらに座ってくれ。今お茶を出そう……ジュースがいいかな?
そう、今日の話はほかでもない、君のかあさんのことだ。
君は以前、研究員に尋ねたそうだね。その時、すぐに答えられなかったのは
君がまだ小さいのを考慮してのことだ。ようくお聞き、
君のかあさんはジェノバといってね、
君を産んですぐ亡くなってしまった。でも、悲しむことはない。
君のかあさんは、すばらしい力を持っていた。君は、その力を受け継いでいるんだ。
自信を持っていい、君は、特別な子なんだよ……そうそう、話は変わるが、
君のかあさんであるジェノバの妹にルクレツィアという人がいて、
君に会いたがっているんだ。今度、会ってやってくれないか。
あと、午後に行う検査についてだが……
あなたは、誰?
あらあら、×××××。よく来てくれたわね、うれしいわ。
こっちにいらっしゃい。いい子ね。ほら、よく顔を見せて……
ガスト博士はよくしてくれる?あの人は研究第一の人だから、他のことには目が
行き届かないことが多くてね、ううん、これはあなたに言ってもしょうがないわね…………
そうそう、いまいくつ?……まあ、そんなに……ごめんね、
もっと早くに会えると良かったのだけれど、ほんとうにごめんなさいね…………
あら?わたしはなんで、今日まで、会えなかったのかしら。
……どうして?あたまがぼぅっとして……あぁ、ごめんなさいね。
もっと近くに来て、顔をよく見せて
…………まあ、うまく人間に化けているわね、でもわたしの目はごまかせないわ。
だって、あなたの目、とても禍禍しい蛇の目をしているもの。
しっぽはうまく隠しているのね、角は?牙はもう生えたのかしら?
………うふふ、ほら、見せて、あーんして。あはは、何を怖がるの
こっちにいらっしゃいなうふふふふあははははははははは、わたしには見せてくれるわよね?
だって、わたしは化け物のあなたを
産んだ『母』なのだから
ぼくのおしりには
とがったしっぽが生えている
だれの声?
あなたは、誰?
り ?
「……目が覚めた?」
目を開けると、暗い中クラウドの瞳が視界に入った。
ソルジャーと違って夜目は利かないだろうに、めいっぱい瞳孔を広げてこちらを見つめている。
「すまない、起こしてしまったか」
ちがうよ、とクラウドは笑った。
「ふと目を覚ましたら、セフィロスがすごい眉間に皴を寄せてたの。だから」
「だから?」
「歌を歌ってたの。子守唄」
思わずふきだした。するとクラウドは少しだけむむ、と頬をふくらませた。
「ひどいな。怖い夢、見てるのかと思って、よく眠れますようにって、歌ったのに。
それともセフィロスは、怖い夢なんて見ないの?」
「いや」
セフィロスは首を横に振った。
「全身が汗ばんでいる。よく覚えていないが、何か、良くない夢を見ていた」
「……」
「そんな顔するな。でもな、夢の途中にお前が出てきた」
「俺が?」
「そうだ、そうしたらな……」
「そうしたら?」
「……けっこう愉快な夢に変わったぞ」
そう言って、セフィロスは笑った。それを見て、クラウドもまた笑った。
「よかった」
「そうだな」
闇を落ちきった先に見えたちいさなひかり。
それはひどく小さくて、だけどとても温かい……
そばにいてくれてよかった。生まれてきてくれて、よかった。
そう素直に言える日が、どうか、来ますように。
それは静かな、真夜中のできごと。
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