「ぼ…っちゃん……服、脱いで……」
抱き締めあったままグレミオがもどかしげにセフェリスの夜着の合わせ目に手を差し込もうとしている。 その意図を察したセフェリスは微かに苦笑して一旦身体を離した。
「あぁ、そうか……大丈夫。自分で脱げるから」
そう言って申し訳程度に纏っていた夜着をするりと脱ぎ去ると、細身で適度に鍛え上げられた身体が露わになった。 グレミオの感嘆のため息が聞こえる、セフェリスの裸など、見慣れているだろうに。
一糸纏わぬ姿となった二人はもう一度重なり合ってゆっくりと口付けを交わす。 歳若いセフェリスのキスはけして技巧的ではなかったが、グレミオを興奮させるには充分だった。
「…んぅ……は、…んっ……」
口腔内を犯されながら、グレミオは自らの肢体をしきりにセフェリスに擦りつける。 素肌が触れ合うと体温が直線的に伝わってきてますます煽られ、無意識に腰が揺れ出してしまう。
「グレミオの身体……熱いね……」
「…もっと…熱くしてください……」
唇を解放させてセフェリスが囁き、グレミオが恍惚となった表情で答える。 とろんとした翡翠の瞳と濡れて赤みを増した唇はセフェリスの劣情を狂おしくかきたてた。
「あ……」
セフェリスが首筋に唇を落としてきつく吸い上げると、グレミオは知らずうちに声を漏らした。 その艶めいた声に気をよくして、セフェリスは所々にいくつか痕をつけながら、豊満な胸に手をかけ、 やんわりと揉むように愛撫を加える。
「あぁっ…!」
いつの間にかぷっくりと立ち上がっていた右の胸の尖りを軽く爪で引っかいた。 それだけでグレミオは全身をわななかせ嬌声をあげる。 そのままそこを口に含んで舌先で転がすと、もう堪らないという風情で首を振りながらすすり泣くように喘いだ。
「なんだか、すごい…敏感だね……どうしちゃったの…?」
「わかり…ません……ずっと、身体が疼いて……あっ、やめないで…もっと……」
セフェリスが興奮を隠し切れない声音で訊いてくる。どうしてこんなにも感じてしまうのか、 それはジーンがグレミオに嗅がせた香りの影響だとは考えにも及ばなかったが、 それも襲い来る快感の波を受けて次第にどうでもよくなっていった。
せがまれるままに左の胸の果実も舌で弄び、片手で腰の曲線を辿って触れながら、 もう片手をグレミオの秘所に伸ばす。外陰部をなぞるように指先を滑らせると、くちゅりと淫猥な音がした。
「もうこんなに濡れてる……指、入れていい…?」
グレミオが陶然として頷いたのを確かめてから、充分に潤っているそこに中指を挿入する。
「や、ああぁっ……!!」
ぐちゅ、と少し入れただけでグレミオは海老のように飛び跳ねた。 そして気づく、さきほどからずっと疼き続けていた源はまさに『ソコ』だったのだ。 その場所に直接刺激が与えられて、信じられないような快感が襲う。 狭いヴァギナの中をゆっくりと指が入り込んでいく。そこは次第に侵入者を誘うような動きを見せ始めていた。
「ふあぁ…!やぁ、んっ!だ、め…あああっ!」
グレミオが感じれば感じるほど、中からトロトロと愛液が湧き出してくる。 すべりが良くなって指の根元まで受け入れられるようになると、 セフェリスは人差し指も差し込んで何度も出し入れを繰り返す。
「すごい溢れてきた……そんなに感じるの……?」
「はあぁん!ふぁっ!あんっ、あっ!そ、こ…イイ……っ!!」
指にぬるぬると絡みつくだけでは飽き足らず、まるで壊れた蛇口から零れるように滴る愛液はしとどにシーツを濡らしていった。 グレミオが特に反応を示す箇所をセフェリスは見つけ、そこを挟み込むように擦り続ける。 よがる声がますます高くなり、それに合わせて攻めるペースを上げた。
「はあっ、あっ、あっ、あっ!…だ、だめぇーーー!!」
限界に達しようとしたとき、突然グレミオは全力でセフェリスを突き放した。 その弾みで指が抜け、せわしなく呼吸をするグレミオをセフェリスは不思議そうに見やった。
「グレミオ、どうして…?」
「…だめ、……もう…指だけで、イっちゃうからぁ……」
快楽に侵された舌足らずな口調でグレミオは鳴いて、セフェリスを誘うように自ら脚を大きく広げ、秘部をさらけ出した。
「……きて…早く……ぼっちゃんも、一緒に……」
「……グレ、ミオ……」
その凄まじい誘惑はセフェリスの正気を奪うかのようだった。 セフェリスの中心部は、既に極度の興奮によって完全に勃ち上がり、 生き物のようにびくびくとうごめいて鈴口から雫を滴らせている。 琥珀色の瞳に雄の炎が確かに灯ったのを見て取って、グレミオは急かすように囁いた。
「ぼっちゃん…早く……」
「…うん……いくよ……」
短く言葉を交わすと、セフェリスは自分のものを入り口にあてがい、ゆっくりと押し進めた。
「あ……くっ……!」
指で慣らしたとはいえ、それ以上の質量が押し入ってくる。 今まで快楽に溺れていた身体は強い圧迫感に苛まれ、 グレミオは苦しげに呻いて覆いかぶさるセフェリスにすがりつき、懸命に力を抜こうとした。 セフェリスもまた苦痛に顔を歪めながら、慎重に、少しずつ腰を進めていく。
「ん…キツ……グレミオ、大丈夫……?」
「…ええ……全部、…入りましたか…?」
膣内が充分過ぎるほど濡れていたこともあって、幸いにも裂けたり切れたりすることはなかった。 根元まで収まってしまうと異物感も幾分やわらいで、グレミオは安堵したように吐息ついた。 馴染むまでは動かずに、ただ互いの熱を感じ合う。
「グレミオ……」
「ぼ…っちゃん……」
いつしか自然と視線が絡み合い、どちらともなく微笑んだ。胸の高鳴りとともに、 どうしようもないほどの愛しさとたまらない幸福感に満たされる。 全身が火照るような感覚、そして繋がっている所が、まるで灼け付くみたいにどんどん熱くなっていく。
「……ぁ、グレミオのなか、すごく…気持ちいい……」
熱っぽい息を吐いて陶酔したように声を漏らす。セフェリスが感じてくれている、それだけでグレミオは悦びに打ち震えた。
「本当、ですか…?嬉しい……」
「うん…なんだか、…吸い付いてくるみたい……」
「…あっ…ぼっちゃんの……さっきより…大きく……」
グレミオは膣内でセフェリスのものが一層硬く大きくなるのを確かめながら、 耐え難い快感が繋がった所から脊髄を這い上がって全身を支配していくのを感じた。 もう、じっとしているだけでも息が乱れてくる。
「ぼっちゃん……私、もう……」
「わかってる。…動くよ……」
言いながらセフェリスはグレミオの緋色をした唇にキスを落とし、軽く舌を絡めあわせすぐに離すとゆっくり腰を動かし始めた。
「…あ……んっ!…く、ぅっん……!」
内壁を擦りながら、根元まで入ったものをぎりぎりまで引き抜いては奥まで入れる。 ゆったりとした動きを繰り返すうちにグレミオの内部は愛液を次々と溢れさせ、 擦れ合うたびにじゅぷじゅぷといやらしい音をたてた。もっと深くまで欲しくて、 グレミオはセフェリスの腰に脚を絡みつかせながら自分からも腰を振りだした。
「ぼっちゃ……もっと…っああっ!…もっと、激しく…してっ……」
「あぁ……グレミオの、良すぎ…て……おかしくなる…!」
あまりの愉悦にセフェリスの理性はもう壊れかけていた。 グレミオがねだるとセフェリスはたがが外れてしまったように容赦なくグレミオを蹂躙し始めた。 先ほど指を入れた時に見つけたグレミオの弱いところを狙って何度も何度も激しく突き上げる。
「っああぁぁん!はぁっ…!すご…いぃ…っ!あっ!あぁ、あっん!」
絶え間なく打ち寄せる堪らない快感に、全身をびくびくと震わせてグレミオは悶える。 溢れる涙が頬をつたい落ち、喘ぎ過ぎて口角からは幾筋も銀糸が零れて淫らに濡れそぼっている。 よがり狂うグレミオの姿を眼前にして、セフェリスは瞳からも犯されているような錯覚を感じた。
「ぐれ…っ!あ…や、だぁ……そんなに、キツく…締めたら…っ!」
セフェリスが叩き込むたびに食い千切られそうなほど締め付けられて、 その都度襲い来る射精感を懸命に堪える。もうあまり長く持ちそうにないが、それは相手も同じのはず。 グレミオが悦ぶ箇所を抉るように突きながら、一緒に昇り詰めていく。
「あっああぁ!!もぉ…あっ!駄…目、あぁっ!」
グレミオはその白い喉を仰け反らせ、限界が近いことを告げる。 激しくかぶりを振るごとに美しい金髪がきらきらと乱れ舞い踊るさまが、とても綺麗で。 …思わず、セフェリスは何もかもを忘れて見とれてしまっていた。
「あっ、あ、あ!イ、ク―――いああぁぁ!!!」
まるで電流が走ったようにグレミオの全身が痙攣し、悲鳴のような喘ぎ声をあげながら絶頂を迎えた。 それと同時に膣内が激しく収縮して、セフェリスのものをこれ以上ないほどきつく締め上げる。
「えっ……あ、あぁぁ!!!」
それは、セフェリスにとって不意打ちに近かった。一瞬惚けていたセフェリスは、 突然訪れた絶頂に思考がストップしてしまい、自分のものを抜くこともできずにグレミオのなかへと放っていた。
「…あ、ぁ………」
セフェリスはあまりの余韻に自分の身体を支えることが出来ず、力尽きたようにグレミオの上に倒れこんだ。 荒い喘鳴が部屋を満たしている。それは自分のものか、それともグレミオのものか、あるいは両方か… セフェリスにはよくわからなかったが。それでもグレミオの温かさだけはしっかりと伝わってきた。 気のせいか、とくとくと心臓の脈動も聞こえる、いつもより随分とせっかちな心音。
セフェリスは次第に意識がはっきりしてくると、グレミオがずっと何の反応も示さないことが気がかりになった。 両手をベッドについて身体を起こす。グレミオは薄く唇を開き、安らいだ表情で静かに瞳を閉じていた。
気を失ってしまったのだろうかとセフェリスは少し心配になり、紅潮した頬にそっと触れた。 するとまぶたの下から綺麗な翡翠がゆっくりと姿を覗かせ、そのままグレミオは微笑んだ……心から、幸せそうに。
「…まだ……入ってますね…ぼっちゃんの……」
余韻が抜けきらないのか、グレミオは瞳を潤ませたまま陶然と囁いた。
「あっ…ご、ごめん……我慢できなくて、ぼく…中に……」
セフェリスが不安を隠しきれない様子で謝る。女性の膣内で射精をすること、その意味ぐらいセフェリスは知っている。 しかしグレミオは微笑んだまま、セフェリスの背に腕を回してそっと抱き寄せた。
「もう少し……このままで……」
セフェリスが抱いた不安は、ただの杞憂だ。なぜなら、グレミオの額にうっすらと垣間見える紋章、 それを外してしまえば姫にかけられた魔法はおそらく一瞬で解けてしまうのだから……



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