Ich bin dein



セフェリスが初めてグレミオを抱いてから1年あまり。いつしか二人は頻繁に密会を重ねる関係になっていた。 それは主に執事であるグレミオの仕事が終わってから――深夜に多く行われたが、 セフェリスが我慢できずに昼間から行為に及んだこともある。
屋敷の人間の中には、二人の秘事に気づいた者も少なくなかった。 噂好きのメイドたちの間では既に公認の仲になっていたが、 その噂話をセフェリスに悟られぬよう彼女らは細心の注意を払っていた。 この我侭な独裁者の機嫌を損ねたら屋敷を追い出されるどころか首をはねられかねなかったからだ。
今日も夜が更けるとセフェリスはグレミオを自室に呼んだ。しかし今夜はいつもと若干様子が違った。 ゆったりとした夜着を身にまとうセフェリスは、酷く残忍な微笑みを浮かべていたのだ。
「今日はコレを使うよ、グレミオ」
そう言いながらセフェリスがその手にちらつかせたのは、銀製の手錠と一本の革紐だった。
「早く服脱いで。それとも、脱がせて欲しい?」
セフェリスはその声音こそ穏やかだったが、これから始まるのは懲罰なのだとグレミオは悟った。 セフェリスの目の前で服を総て脱ぎ落とすと、 細工の美しい銀の手錠で両手を戒められ、ベッドに横たわるよう命令された。
「ふふっ、なかなか似合ってるじゃない、その手錠。倒錯的で、そそるよ」
夜着を脱いだセフェリスが覆いかぶさってくるのを感じながら、グレミオは尋ねた。
「…ぼっちゃん、どうなされたのですか?今日は……」
「ちょっと、見ちゃったんだ」
意地の悪い微笑みを浮かべながら、セフェリスはグレミオの身体にゆっくりと愛撫を加えていく。 その仕草はもはや手馴れたものだ。
「あの赤毛のメイドに、言い寄られてるんだね。案外モテてるんじゃない」
その一言でグレミオはこの懲罰の意味を理解した。最近屋敷に来たばかりの新入りのメイド… 彼女はグレミオに好意を寄せているようだ、気の強い彼女は人目も気にせず強引にアプローチをかけてくる。 その様子を偶然セフェリスに見られてしまったのだろう。
「……あれは、…彼女が一方的に……」
「そんなこと知ってるよ。でもあんな光景を見せられたぼくの気持ちも、わかってくれるよねえ?」
あまりのショックでその場を立ち去ることしか出来なかった…… そのことは屋敷の独裁者の矜持を深く傷つけた。やり場の無い怒りを愛撫という形でグレミオに叩き込む。
滑らかな肌を包み込むように撫でまわしながら、この1年間で知り尽くしたグレミオの弱いところを強く吸い上げ、 跡を残しながら次第に愛撫を下降させていく。グレミオが感じて身じろぐたび、 銀の手錠が卑猥な旋律を奏でて二人の劣情をかきたてる。 そして足の付け根にまで唇が触れたとき、グレミオはか弱く喘いだ。
「っ……は、ぁっ……」
そしてすっかり勃ちあがったその先端にキスをして、滲んでいた蜜を舐めとってみせる。そのまま口に含んで思うさまに弄んだ。
「んっ……おいし…」
「あ…そんな……舌、使ったら……あぁ…だめ、です……っ」
溢れる嬌声に煽られるようにセフェリスはいっそう深く飲み込んで激しく愛撫した。 前を嬲りながら、後ろにも手を伸ばし、奥まった場所に指を二本、入れた。 中をゆっくりとほぐしていくと、ぐちゅぐちゅといやらしい音が鳴る。 内部のほんの少し固くなっているところを中心に攻めるうちにグレミオの声がひときわ高くなった。
「ああぁっ…!だ…め……もう…出、る……!」
指を入れている内側がひくひくと痙攣を始め限界を告げる。しかし達する直前、 セフェリスは一切の愛撫を止めた。指を引き抜いて口角を伝う体液を拭いながら、 しどけなく息を乱すグレミオの艶姿を眺める。
「…もう、挿れただけでイッちゃいそうだね」
「早、く…あぁ、早く…ぼっちゃん……!」
だがグレミオの哀願をセフェリスは残酷な微笑みでもって拒絶した。その手には一本の革紐が握られている。
「忘れてない?これは『おしおき』なんだから」
セフェリスは手にした革紐で、限界まで大きくなったグレミオのものの根元をきつく縛り付けた。
「ぼっちゃ、ん…やめ……痛っ……」
手錠のせいでグレミオには革紐をほどくことも叶わない。その翠の瞳に涙を滲ませ、苦痛に喘ぐ。 かまわずセフェリスは自らの怒張したものを容赦なくグレミオの蕾に突き入れた。 足を大きく開かせて揺さぶってやると、その身体はびくんびくんと大きく震える。 悲鳴はかみ殺そうとしても口から漏れて止まらなかった。
「それでさ、グレミオ…あのメイドに……何て、言った…の…?」
中は恐ろしく狭かった。乱れがちな息を堪えながら、セフェリスは苦しむグレミオに問いかける。
「くぅ、っ…し…使用人同士の、恋愛は…禁じられて、います、と……」
吐き出せない熱に苛まれながらどうにか口にしたグレミオの答えは、セフェリスの失笑を買った。
「じゃあ、ぼくたちのこの火遊びも、本来なら…禁じられるべきものだよね?」
そう言い放つとセフェリスは一切の情けを捨てた。腰を大きく動かして激しく抜き差しを始める。 繋がったところから生じる水音と肌と肌の打ち付けあう音、加えて手錠が揺れる金属音が調和を生み正気を乱していく。 ぎりぎりまで引いてから突き上げるたび、グレミオの口から憐れな悲鳴が溢れる。 根元で縛られたそこが痺れるように激しく痛んだ。
「うあぁ…くっ!…あぁっ…!お、ねがい…もう……!」
「ふふ…そんなに……締め…付けないでよ……」
いつもより遥かに強い締め付けは痛いほどだった。5分と経たぬうちにセフェリスにも次第に余裕が無くなってきたようだ。
「もう……許して…くださ……っ」
ともすればその激しい締め付けでイッてしまいそうで、だからグレミオが泣いて許しを請うたとき、 セフェリスはチャンスをやった。
「許して欲しかったら…言ってご覧よ……おまえは、誰のものだ?」
きつく縛られたそこは次第に変色して青みがかってきている。痛みすら遠のきかける意識の中、 涙をぼろぼろと零しながらグレミオは無我夢中で叫んでいた。
「私、はあなたの…ものです……あぁ…!…あなたの、もの……あなただけ…の……!」
望みどおりの応えを受けて、セフェリスは微笑む。
「よく…言えた…ね。じゃあ…イッていいよ……」
セフェリスもそろそろ限界だった。低く囁きながら、グレミオの熱を堰き止めていた紐をほどいて激しく突き上げた。
「いッ…あぁっ…あああぁーーー!!」
グレミオの身体が大きく震えたかと思えば、背を弓なりに反らし、溜めに溜めた熱を一気に解放した。 そしてそれとほぼ同時に、セフェリスもグレミオの体内に白濁を吐き出していた。
「はぁ…はぁ…は……」
しばらく二人は動けなかった。それほどの絶頂だったのだ。 先に身体を動かすことが出来たのはやはりセフェリスの方だった。 瞳を閉じて懸命に息を整えているグレミオの、その瞼にキスをひとつ。 すると彼はうっすらと目を開けて、傍らのセフェリスに腕を伸ばし、黒髪を優しく梳きながら囁いた。
「…ぼっちゃん…、これだけは覚えておいてくださいね……」
たとえ何があろうと、私は、あなたのものですから。
他の誰にせがまれようと、自分にはセフェリス以外見えていないということを信じて欲しかった。 それでもセフェリスは執拗に『言葉』を欲しがる。言葉にしないと、伝わらないのだ。 グレミオはそんな少年を憐れに思い、同時にいとおしいと…思った。 その心を知ってか知らずか、ひとしきり満足した様子のセフェリスはグレミオの手首の戒めを解く。 そして無邪気に笑いながら、今日初めてとなる唇へのキスをした。
「ねえ…もっとしようよ、第2ラウンド。今度は優しくしてあげる……」



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