「なぁ俺、セフィロスを抱きたい」
夕食時、開口一番クラウドが発した言葉に、セフィロスは口中にフォークを加えたまま
しばし思考を停止させた。視線を泳がせたテーブルの先には、
今日セフィロスが作ったパスタとサラダが行儀よく並ぶ。
「……ルッコラの葉は嫌いだったか?」
「違う」
「じゃあバジル」
「違う違う!変なものは何も食べてない!!俺が言いたいのは、
俺が、セフィロスを、抱きたいってこと!!」
首を左右にぶんぶん振って、ご丁寧に文節ごとに区切ってクラウドは言い切った。
セフィロスはまだ話がよくわからないといった風情で柳眉をひそめた。
「それは……つまり、オレに、挿れたいということか?」
「そゆこと」
「断る」
セフィロスはにべもない。
「なんで!」
しかしそこで引き下がるクラウドではないようだった。
いつもにも増して頑ななクラウドに少々辟易しながら、
セフィロスはそういえば特別断らなければならない理由がみつからないことに気づいた。
そのことに気づくとセフィロスは内心焦ったがそれを悟られないよう努め、
その努力はおそらくクラウドのこれまでにない興奮状態によって成功するように見えた。
「それは……おまえ、体格的につらいだろう」
「うっ……それはそうだけど、大丈夫!やりかたは色々あるし、愛があるから!」
「それに、オレにそんな趣味はない」
「俺だって、別に趣味で下やってるわけじゃないよ!」
とにかく!とクラウドは力いっぱい空気を吸い込んで、宣言した。
「今日は絶対、セフィロスを抱くから!」
びしっ、とセフィロスにフォークを突き出した。
一方セフィロスは先ほどより冷静さを取り戻したため今の状況を分析することにした。
(とにかく、クラウドの様子がいつもとちがうな)
「クラウド、どうしてそんなことにこだわるんだ?」
そんなのどっちだっていいだろう、とセフィロスは諭す。
クラウドのハイテンションにつきあう必要はない。
こっちのペースに引き込んでしまえばいいのだ。
「……それは……!」
クラウドが言葉につまった。いい傾向だ、とセフィロスはさらに続ける。
「今日、何をしていた?」
「……ユフィと、会った」
「つまり、彼女に何か言われたんだな?」
「…………」
図星だ。あの小娘(実はもう小娘といわれるほどの歳ではない)、
今度会ったとき覚えていろと胸中でつぶやき、
セフィロスはふてくされたように俯いているクラウドを優しくなだめた。
「大丈夫だ。あの娘に何を言われたのかは知らないが、
そんなことでオレたちがどうなるというわけではないだろう?」
「…………」
「もういいから、今は夕食を食べてしまえ。文句なら後で、いくらでも聞くから」
コックをひねると、シャワーから少々熱すぎるくらいのお湯がふりそそいだ。
クラウドはそのお湯を頭からかぶりながら、今日のユフィとの会話を思い出していた。
「ねぇクラウド、あんたとセフィロスってさ、もう寝ちゃったりしたの?」
「……ええ!?」
それなりの歳をとってもユフィの好奇心は衰えを知らないらしい。
最近ニブルヘイムに造られたばかりのカフェでの会話だった。
冷たいキャラメルマキアートを
すすりながらユフィはクラウドに問い詰めた。ほとんど尋問だ。
「一緒に暮らしてるんでしょ?だったら、どうなのかなあって、
気になってさ。セックス、したの?」
クラウドはうつむいて、少し頬を赤くして、小声でささやいた。
「…………したよ」
「それはなに、新羅にいたころから?」
「……いいや。あのころは、一緒に寝ることはあっても、めったに、そういうことは」
クラウドが言い切る前に、うそ、信じられない!とユフィは大きな目を丸くさせた。
「セフィロスも苦労したねー。男の人は、我慢するの、大変らしいから」
「……そうなのか?」
「あんたがちっちゃいから、我慢してたんだろうね。ひょっとして今も、
何か我慢させてるんじゃない?あんた、マグロだったりしない?」
「……マグロ?」
「抱かれる方が何もしないってこと。あんたのことだから絶対マグロでしょ。
だめだよそれ。嫌われちゃうよ」
(マグロってよくわからなかったけど、嫌われるのは嫌だ……)
セフィロスから嫌われることを恐れたクラウドは「何もしない受け」からの
脱却を図るために、攻めに転じようとしたようだ。
「何かする受け」になるという選択肢は、クラウドの天然チョコボ頭からはすぽーん、と抜けているらしい。
(でも、夕食の会話からいくと断られた感じだし、どうしたらいいんだろう……)
頭から洗髪料を洗い流した、そのときだった。浴室のドアが静かに開けられた。
「入っていいか?」
「……?いいよ」
クラウドは気づかなかった。いつものセフィロスの声色が少し異なっていたことに。
ぬれた目を少々乱暴に擦って後ろを振り向いた。長い銀髪が目にまぶしい。
「……おお」
「…………」
「…………おお」
「びっくりした、か?」
振り向いた相手、その身長が、いつもより足りない。
相手はバスローブを身に着けていたが、胸の辺りに、明らかに、
ないはずのふくらみがある。その下の曲線も、本来なら描きようもないものだ。
男ならば。そして普段よりもいくぶん柔和になったその表情で、にっこりと微笑んだ。
「抱きたかったのだろう?」
「ええ、それは、そうですけれども」
ぱちくり、とクラウドは数度またたいた。すると視界も幾分クリアになったようだ。
あらためて、相手――セフィロスをまじまじと見つめる。身長はクラウドより若干低く、
それでも女性のうちでは長身な部類に入るだろう、スタイルもよい。
バスローブの上からなので分かりづらいが、かなりの巨乳だ。顔つきも、
すっと通った鼻梁、切れ長な瞳などセフィロスの特徴を残しつつ、
女性らしい柔らかな印象に変わっている。頭の先からつま先まで、どう見ても、女性だ。
おそるおそる、クラウドは浴室の出口に向かい、セフィロスの肩に触れた。
「やわらかい……」
「当然だな、女性は男性に比べ皮下脂肪が多い」
「セフィロス……だよね?」
「他の誰だと?」
「…………綺麗」
「それは、どうも」
そのままゆっくり、顔を近づけた。察したのか、セフィロスは目を閉じた。
深いくちづけ。ぴちょんぴちょんとひねりかけのコックのせいで
シャワーから滴り落ちる水音に、違う類の水音が加わる。
舌と舌が絡み合い、口中をまさぐりあい、互いの唾液を飲み干す。
それらの音は彼らにとって決して不快なものではなかった。
「ん……んぁ……はあっ………」
「……あ………ん……」
漏れる吐息は、喘ぎは、はたしてどちらのものか。ただ明らかなのは、
どちらがどちらをリードするというものではなく互いのぶつかりあいだということだった。
歯の接触音すら聞こえる、そこに一切の余裕はなかった。
それはセフィロスが普段有しているはずの「主導権」を完全に放棄したことを示していた。
「クラウド……待って……」
セフィロスが行為を静止させたのは、クラウドがくちづけしたまま
セフィロスのバスローブを脱がしにかかったときだった。
「何?セフィロス」
「バスルームでやるのか?」
「嫌?」
「背中が痛いのは嫌だ」
それもそうだ、とシャワーのコックを放置したまま二人はバスルームを出た。
濡れた身体はそのままに、どうせ濡れるのだから関係ないと寝室に入る。
セフィロスがベッドに座り、ぎしりと音を立てた、その瞬間より、
ベッドは穏やかな眠りを提供するという役割を完全に破棄した。
座ったセフィロスがクラウドに手を差し伸べ、クラウドの腕を取ると、
ぐいと引き寄せた。そのまま、クラウドはセフィロスに覆いかぶさる形となる。
「誘ってるつもり?」
セフィロスは微笑をたたえたまま答えない。
そして引き寄せたクラウドの手を自らの豊満な胸に当てて見せた。
クラウドはそれを自分の都合のよいように解釈した。
バスローブの紐をほどき、合わせ目をくつろげるとセフィロスの胸に手をすべらせた。
その肌は驚くほどきめ細かくつややかで、手に吸い付くような感覚に指が震えた。
女性化したセフィロスの胸は大きく、クラウドの手に余る。手のひらで乳首を押しつぶし、
円を描くように愛撫すると、いつもより感じているのだろう、セフィロスはわずかに身じろいだ。
右胸は愛撫を続けたまま、左胸の勃った乳首を舌でぺろり、と舐める。
「ん……」
ぺろぺろと赤く熟れたいちごを舐めながら、左手を降下させていく。そのときだった。
「………え」
クラウドの左手が、妙な感触を得た。それは感じ慣れた、
しかし今の状況では有り得ない感触でもあった。
クラウドはゆっくりとセフィロスの身体からバスローブを剥ぎ取った。
そして問題の箇所を見て呆然とした。
「これは……何?」
「見ての通りだ」
身体の中心にそそり立つ砲身。
「これを……どうしろと?」
「好きにするがいい」
恐る恐る、クラウドはそれに手を伸ばした。
それはむしろ未知のものに対する好奇心による行為でもあった。
指が先端を掠めつつ根元にたどり着くと袋に触れた。さらに奥へ指を滑らせると、膣と思われる窪み。
「両性具有……なのかな?」
「さて」
セフィロスはいつもより高い声でそっけなく答える。クラウドは少し面白くなさそうにつぶやいた。
「セフィロス、もうすこし可愛い気があるといいのに」
「…………ふむ」
セフィロスはクラウドをじっと見つめ、しばし何かを考えているようだった。
そして何か決心したようににっこりと微笑んだ。
「じゃあ、気持ちよく、して、くれる?…………クラウド」
クラウドの耳元に唇を寄せ、ささやいた。この声を聞いた男の大半は理性を失うであろう、
わずかにハスキーな、その声で。
「…………やりすぎ……ってか、後で後悔しても、知らないからな」
思わず真っ赤になってしまった顔色を誤魔化すように少し唇を尖らせてから、行為を再開した。半勃ちのそれを両手で大事そうに包み込むと、
上下にしごいた。しばらくすると、透明な蜜が浮かび上がる。
「……気持ちいい?」
上目遣いで、クラウドが問う。その姿は残念ながら、
どちらかというと抱かれる側のそれだ。しかしそれもあまり問題ではない、
セフィロスがクラウド以上に抱かれる素質を有しているならば。
「…………あまり、焦らさ、ないで」
セフィロスは心なしか顔をさくら色に染めている。
それが意識的なのか無意識なのかわからないが。
「ごめん。でも、どうしても、最初の一滴が欲しかったから」
そう言うとクラウドはその舌先に全神経を集中させて大事そうに
、愛液をすくいとった。その危険な味にわずかに眩暈を覚える。
少し視線をずらすと男性と女性のシンボルが同時に視界に入る。
疑問は山ほどあるが、少量の酒を飲んだときのような酩酊感がクラウドをつつみ、
理性的な思考を中断させていた。
「……ふっ………あ……」
先端の部分を口に含む。たまらずセフィロスは声を漏らした。
柔らかな唇と這いずり回る舌の感触。
セフィロスは喘ぎを抑えようと無意識に口へ手をやったが、クラウドがそれを制止させた。
「あ、あぁ……んっ、ひっ、だめ、だめぇ……クラウド、で、ちゃう……からぁ……」
セフィロスの懇願を無視して、更にクラウドは秘穴に指を一本滑り込ませた。
そこは既に十分潤みきっており、抵抗なく奥へと誘ってくる。
その拍子抜けするほどの柔らかな感触に、慣らす必要はあまりないかもしれないな、と
クラウドは思った。そして、ある一点を指が突いたとき、
セフィロスの身体が陸にあげられた魚のように跳ねた。
「ひっ…やあぁ!」
「……ここが、いいの?セフィロス…………ここは、女と男、どっちの性感帯?」
クラウドはくすくす笑いながらその箇所を執拗に攻め、
同時に口淫も再開させる。割れ目に沿って舌をひらめかせ、
裏筋を何度も何度も器用に舐め上げられて、セフィロスは生理的な涙を流し、
開いたままの唇からは銀糸をこぼした。あまりに感じすぎる恐怖から必死にクラウドの頭
を引き剥がそうとするが、力が入らない。
むしろ叱るように亀頭をクラウドにかじられて、身をひきつらせる。
「や、もう……やぁ……ぁあ!…ああん、あぁ、…でる……クラ……っ、
しろいの、でる……!」
大きく、痙攣。その瞬間クラウドは唇を離した。
二度目、三度目の痙攣で軽く顔射させる。その後もじわじわと滲んでくる精液。
もったいないので吸うと、セフィロスは身体を震わせた。
「……いっぱい出したな」
クラウドは満足そうに微笑んで、息をきらせたままのセフィロスと唇を重ねる。
そして、顔に少しだけかかったセフィロスの精液をぺろぺろ、舐めとらせる。
その光景を少しばかりの優越感を抱いて、下半身をこらえながら見つめるクラウド。
少し冷静になればきっとすぐ気がつく異様さ、だけど本人たちはいたって真剣、
誰が責められる?
「セフィ、いつもより早いね。そして……」
放ったばかりにもかかわらず既に力を持ち始めているそれの先端をぴん、と爪弾く。
「いつもよりえっちだ」
「ば、……か」
女性化すると体力も低下するのか、セフィロスはあまり身体に力が入らないようだった。
この状況で強いるのは酷かな、と思いつつも、クラウドの中に灯る火は抑えようもない。
「セフィロス?……つらいと思うけど、俺も男だから、その、……挿れたいんだ。大丈夫?」
クラウドの懸念は杞憂に終わる。セフィロスの答え……
すなわち、その顔に浮かべられた、女神も嫉妬するような微笑によって。
「うん、だいじょうぶ……何度でも、いいよ……いっぱい、出して。
そのかわり、一滴も、こぼさないで、ね?」
セフィロスはクラウドを引き寄せる。覆いかぶさるクラウド。
体を進め、ゆっくりと繋がる。小刻みにぶるぶると身体を震わせ、
口からは互いの喘ぎ声が。
「ん……あ、ああ、……セフィ、なか……すご……」
「あぁ、ぁあん……クラウドの…大きい……大きいよぉ………」
セフィロスは感嘆の声を漏らし、中に入ったクラウドの形を確かめようとする。
それが結果的にきゅ、きゅとクラウドを締め付ける形となる。
「や!あ……セフィロス、まだ、動かないで……」
クラウドは繋がってからしばらく動くことができなかった。
それほどセフィロスの中は熱く、肉襞はクラウドに絡み付いて離さなかった。
それでもどうにか射精の欲求を堪え、ぎこちなく腰を動かし始める。
「はあ、は、セフィロ……きつ、あっ、も…少し、ココ、緩めて……」
「ふ……っ、だめ、でき、ない………や、やぁ…もっと、もっと、きてぇ」
緩慢な腰の揺らめきに耐え切れないとばかりに
セフィロスは自分から腰を動かして続きをせがむ。
それに誘われるように徐々に律動を早めていくクラウド。
ベッドスプリングのきしみ、ぐちゅ、じゅ、といった淫猥な擦れあう水音が
よりいっそうふたりを駆り立てていく。
「きゃあん!あっ、あっ……はぁあ!イイ、イイよぉ……とろけ、ちゃう……
あ、そこ、あたっ、てる、の……ああ、あぁん、そこ、……気持ち、いい……!」
「あ、あっ、……セフィ、ロス……いい?気持ちいい?……
あ、は、うんっ……だめ……そんなに、しめたら……」
もうなにもわからなくなって、己が欲望を相手の腹部に何度も擦りつけるセフィロス。
その欲望からは先走りが後から後から零れて、快感の深さを主張する。
セフィロスの中を我が物顔に蹂躙しながら自身も喘ぎ声をはばからないクラウド。
その吐息は熱く、薄く目を開き紅潮した顔には恍惚が滲む。
「いいっ、いい……奥ぅ……そこ、いいっ……や、あ…しびれちゃ
……も、でるぅ、イっちゃう……やぁん、もう、…もう、だめぇ」
「セフィ…は、ぁ……セフィロス…いい、よ、……いいよ、いっていいよ」
セフィロスが蕩けかけた声で訴える。それと同時に、
肉襞の締め付けがよりいっそうきつくなる。クラウド自身も限界を感じて、
動きを早めた。そのまま共に上り詰める。空を駆け上がる竜のように。
「ああぁ……!もうイク、イクぅ…あ、ぁああああ!」
「あ、あっ………あぁ……あ!」
長い髪を振り乱しながら欲望をビクビク震わせてセフィロスは遂情した。
それとほぼ同時に、クラウドがセフィロスのなか目掛けて何度も何度も身体を痙攣させる。
そのあまりの余韻に、ふたりはしばらく動かなかった。
お互いの息を混じり合わせ、身を寄せ合うように擦り寄った。
ようやく呼吸を整えてクラウドが抜こうとすると、
セフィロスがぱさぱさと髪をゆらして首を左右に振った。
「やぁ、おね、がい……抜かないで……」
クラウドの上に跨り、首に両手を回し体重を預け、切なげに吐息を漏らす。
それだけで、クラウドはセフィロスの秘肉に包まれた刀身が
如実に鍛えなおされていくのを感じた。
「……まだ、欲しい?」
くいくい、と腰を軽く突き上げると、イったばかりで敏感になってる所為もあって、
必死にクラウドの肩に頬をこすりつけた。
「う、ん……まだ、足りない……ぜんぜん…もっと、もっと、欲しいの……
抜かないで……動いてぇ」
涙声で言いながら、自分から腰を揺らめかせる。クラウドはちょっと困ったように笑って、
自らの砲身に向かおうとするセフィロスの手を握り遮った。
「淫乱なセフィロス。いいよ、動いてあげる」
軽く口付けてから再びセフィロスを押し倒すと、いつもセフィロスからされるように、
一旦ぎりぎりまで抜いてから、最奥まで突き上げた。
その度にセフィロスの口からは歓喜の悲鳴があふれ出す。
「ひ、あ!……ああっ……イイ、イイのぉ……好き、クラウド……好き、好きぃ」
「ああ……セフィロス、愛してる。愛してる愛してる愛して…………」
クラウドがふと目を覚ますと、
まず身体のあちこちから発せられる疼痛が意識の大半を占めた。
ゆっくりと身体を起こすとその痛みがより近く感じられた。
「腰、痛……頭、いた………」
「ようやく目が覚めたか」
声は存外近くから掛けられた。ベッドサイドに座って、
いつもの、男性の、セフィロスがこちらを見ている。
クラウドは寝起きのあまり働かない頭でその存在を認知する。
「あれー……男だ……」
「当然だ」
クラウドは頭を掻いて昨日のことを思い出そうとする。
あれは夢だったのか?いや、そんなはずはない。
あんなに気持ちよかった、夢精もしていない。だけど、最後のほうになると、
もうよくわからなくなっていて、結局何回イったのかすらよく覚えていない。
「夢だったのかなあ……」
「悪夢でも見たか?」
セフィロスはこちらを見てくつくつ笑うだけだ。クラウドは思い切って尋ねてみた。
「なあ、昨日さ、セフィロスがそのまんま女になったような奴がいたんだ。知らないか?」
セフィロスは視線を泳がせてしばらく考えてから、急に立ち上がった。
何をするのかと思えば、片手でそっとクラウドの目をふさいで見せた。
「え……何すんだ?」
クラウドは少し驚いて、慌てて顔を背けた。その一瞬のことだった。
「……私のこと?」
目の前にいたのは昨日の女性。目があうと、にっこり笑いかけてくる。
「???……どういうこと?」
クラウドはわけがわからない、といった風に目を瞬かせている。
その間に、セフィロスはまた元の男性の姿に戻ってしまった。
「覚えていないか?……ジェノバの特性」
「リユニオン?」
「そっちじゃなくてな。……他人の記憶に合わせて自分の姿、
声などを変化させる能力のことだ」
「それって……まさか」
「そう。お前の女性の身体に関する記憶に合わせて自分の身体を変化させた。
だれの身体が元になっているのかは、まあ聞いたりしないが」
「……ごめん」
脳裏に幼なじみの顔を思い浮かべて、クラウドは素直に謝った。
が、セフィロスは別に気に留めたわけでもないようだ。
「それにしても、昨日でだいたいお前の技術はわかったが……
やはりまだまだだな。これではおいそれと上を譲るわけにはいかない」
「な、なんで!?…あんただって、さんざん感じてヨガってたじゃないか」
「どうして感じていたか、わからないか?」
くすくす笑いながらクラウドに顔を近づける。何をするのかと思ったら、
クラウドの耳元にほんのちいさな声で、ひとことつぶやいた。
「――――っ」
クラウドはみるみるうちに顔が熱くなっていくのを感じた。
声も出せずにいるクラウドを面白そうにみつめて、
セフィロスはミネラルウォーターを飲みにキッチンに向かっていった。
一方、セフィロスに体よくあしらわれてしまったクラウドはふてくされてベッドに横たわった。
―――それは、お前だから、だ
「そんなこと言われたら、なにも言えないじゃないかあ」
クラウドにはわかっていたのだ。セフィロスの優しさ。
クラウドが抱きやすいように、わざわざ女性にまでなったということ。
中心に唯一残った「男」がセフィロスの最後の矜持を表している様で、愛しかった。
またクラウドが駄々をこねたら、セフィロスは女性化するのだろう。
それをわかっていて、クラウドはくやしがるのだ。
セフィロスが寝室に戻ってきたら、そのことでまた舌戦を交えることになるのだろう。
その予想を、クラウドは確信して何だかおかしくなった。
気づいたら、大きな声で笑い出していた。
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とりのにゃも初の18禁です。上手く書けなくて、ひどく苦労しました。
正直、アップしようか迷いました。こんなのでいいのかな、と……
セフィロスファンの方、ごめんなさい〜。(逃げ)
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