クラウドに教えてもらったとおり、セフィロスはスラムの教会にいた。
礼拝台の前でただひとり、跪いていた。なにをそんなに熱心に瞑目しているのか
ティファにはわからなかったし、特別知りたいとも思わなかった。
「クラウドから、だいたいのことは聞いたわ」
語りかけると、セフィロスはおもむろに立ち上がり、こちらを振り向いた。
静かな表情だった。傍に寄ると、ティファは小さな封筒をセフィロスに差し出した。
その封筒には何も書かれていなかったが、セフィロスにはそれが何なのか
言われずとも分かったようだった。受け取ると、一言だけ、こう呟いた。
「……悪かった」
「別にあなたを責めたいわけじゃない。クラウドがね、悪いのは自分だって、
そう言い張るから、私もあなたを責めないわ」
ティファに表情はなかった。それがかつての敵に対する精一杯の誠意だった。
「…………」
「ただ、もう2度とミッドガルには来ないで。……それだけでいい」
「…わかった」
短く、返事をした。その静謐な表情、クラウドが愛した人物の表情を、しばしじっと見つめて、
ティファは踵を返した。もう会うこともないだろう。
ティファの姿が教会の外へと消え、教会に静寂が戻ってからしばらく経った頃。
セフィロスは封筒から一枚の小さな便箋を取り出した。そしてゆっくりと便箋を、開いた。
「―――っ」
突如「それ」はセフィロスへと入り込んだ。クラウドの最後の思い、
そのかすかな残響。残響に過ぎなかったが、それは強く、あまりにも強く、
セフィロスを襲った。たまらずセフィロスはその場に崩れ落ちた。
腕がかたかたと小刻みに震え始めて、声にならない悲鳴をかみ殺して、
耐え切れずに冷えた肩を力一杯かき抱いた。それはまるで、
言葉にならなかったクラウドの思いを、抱きしめようとするように……
前半終了。
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